我々の生活は、今やモータなしには成り立たないほどになってきています。動くもの、回るものは、ほとんどすべてモータが使われているといっても過言ではありません。周りを見渡してみてください。エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、PC、スマートフォン、プリンタ、自動車、ドライヤー……これらすべて、モータがなくては商品として機能しません。モータは世界で発電される電力量の約50%を消費しているといわれています。身近に浸透していることを考えると、納得できますね。

こんなにもたくさんモータが使用されていますので、モータ1つあたりの消費電力が下げられたら、省エネに大きく貢献できることはご理解いただけると思います。こういった背景により、市場でモータに求められる電力効率は、年々増加傾向にあります。では、モータの消費電力はどのように決まるのでしょうか。

モータ電力効率に影響する要素

「蛍光灯をLEDに変えると電気代が安くなる」という話を聞いたことがあると思います。蛍光灯・LEDどちらも、電力を光に変換する役割ですが、蛍光灯よりLEDのほうが電力を光に変換する効率が高いため、電気代が安くなるのです。電力効率がいかに重要であるか、イメージが捉えられると思います。

モータの場合は電力を回転力に変換します。この電力効率を高くすることで、発熱が抑えられたり、バッテリーが長持ちしたりなど、省エネ化が実現できます。

さて、ではどうしたらこの電力効率を高めることができるのでしょうか。ここでぜひ理解いただきたいのが、エネルギー保存の法則、です。理解できると話がスムーズになるので、ぜひお付き合いください。

この法則を物理学的に説明すると、

「エネルギーがある形から他の形へ変換する前後で、エネルギーの総量は常に一定であり不変であるという法則」

となります。車を例に挙げて考えてみましょう。

車が走っているとき、運動エネルギーを持った状態にあります。非常に大きなエネルギーであることはみなさんもわかるかと思います。ブレーキを踏むと、ブレーキパッドが車のタイヤに押し付けられ、その摩擦力で車が止まります。このとき、車の運動エネルギーはどこへいったのでしょうか?

車が減速し停止することで運動エネルギーはゼロになります。しかしそのエネルギーは消えてなくなったわけではありません。運動エネルギーは摩擦によって熱エネルギーに変わったのです。ブレーキパッドやタイヤ、道路に摩擦熱が加わり、温度が上昇する、という形になって現れます。

エネルギーは単に形を変えただけで、消えることはなく、全体のエネルギー量は変わりません。これがエネルギー保存の法則です。モータにも当然、このエネルギー保存の法則が成り立ちます。この視点で電力効率を見てみましょう。2段階で考えます。

1. 力率

力率とは、供給された電力のうち、どの程度が有効に働いたかを示すものです。これは、交流における電圧と電流の位相差によって発生するものなので、直流モータには存在しない概念です。交流では、電圧と電流に位相差が生じることにより、仕事をしない電力が発生します。この関係を示したものが次の式です。

皮相電力 = 有効電力 + 無効電力
力率 = 有効電力 ÷ 皮相電力

無効電力は仕事をしないのですが、エネルギー保存の法則により消えることはありません。電線の中を行ったり来たりするだけの電力です。

では、力率を上げるにはどうすればよいでしょうか。エネルギー保存の法則の視点で、仕事をしていないエネルギーに目を向けてみましょう。そうです、無効電力です。この無効電力を可能な限り少なくすることで、省エネなモータにつながる、ということがわかると思います。(具体的な改善方法は、後述の「力率改善装置の導入」にて)

このように、エネルギー保存の法則に目を向けると、ロスになっている部分を見つけられ、改善点を見出すことができます。

2. 「電力エネルギーから運動エネルギー」の変換効率(電力効率)

電力効率の定義は、以下の式で表されます。

回転運動のエネルギー ÷ 使用される電気エネルギー(出力/入力)

上記の効率は、実際のところ高くても50%前後です。エネルギー保存の法則から考えると、かなり多くのエネルギーが回転運動に換算されず、無駄になってしまっているということがわかります。この損失を極力少なくすることが、電力効率アップにつながります。損失にはどんな要素があるか、内部要因と外部要因とに分けて詳細を探ってみましょう。

モータ内部の損失要因

モータの構造部品を要因とする損失例を記載します。これらは、モータに使用される部品や構造で損失度合いが確定するので、改善にはモータメーカによる設計変更が必要となります。

機械損失

物理的な回転運動に伴い、さまざまな抵抗が発生します。軸受の滑り抵抗、軸受のアライメントによる抵抗、ブラシとコミュテータとの摩擦、振動、空気抵抗など。

銅損

モータコアの巻線抵抗を流れる電流による発熱が銅損として発生します。

鉄損

モータコアの材料に起因する損失です。「ヒステリシス損」と「渦電流損」の2種類があります。コア材料の品質により、損失性能が変わるので、より効率を求める場合は高性能なコアを使用するのも効果的です。

磁石の材質

損失の要因というよりは、損失改善の手段としての紹介です。磁石の性能によって、電力効率は大きく変化します。磁力の強い磁石を使うことで、少ない電流値で強いトルクを生み出すことができ、銅損の改善につながります。基本的には、強い磁力の磁石の使用が有効ですが、渦電流損の悪化も招くので、バランスの良いポイントを選ぶ必要があります。

モータ外部の損失要因

続いて、モータの外部、設置環境や関連装置などで考えられる損失を紹介したいと思います。外部要因ですので、メーカに頼らずユーザ側で改善できる項目も含んでいます。こちらは、事項で省エネ化する方法とセットで記載します。

モータの消費電力を省エネ化する方法6選

インバータの導入

ACモータにおける省エネ化には、インバータの導入が有効です。インバータを使用することで、供給する交流電圧と周波数を可変にできます。これによりACモータでは通常不可能な回転速度やトルクを調整できるようになります。過剰な回転数でやむなく運転していた場合、低速での回転が可能になるため、適切な回転数での運転が可能になり、無駄なエネルギー消費を削減できます。

力率改善装置(コンデンサなど)の導入

電圧と電流の位相ズレを改善させ、力率を改善できれば、無駄な電力消費をなくすことができます。改善手段として最も代表的なのは、コンデンサです。コンデンサ単体では負荷の変動に対応できないため、自動力率調整器と呼ばれるシステムの負荷に応じてコンデンサ容量を自動で調整できる装置などもあります。 

定期メンテナンスとクリーニング

基本的なことではありますが、見落としがちなポイントです。運転中のモータは熱を発生しますが、ホコリや汚れによりこの熱の放熱が阻害されると、モータ内部の高温化につながります。その結果コイルが高温になることで、銅損の悪化を招きます。

バランシングとアライメント

ロータのバランシング、アライメントが不適切だと、本来回転に使われるエネルギーが振動や摩擦に変換されてしまいます。これは、損失以外の何者でもありませんし、別の問題を引き起こすことにもなりかねません。あまりに悪い状態だと、本来必要とされる回転力が得られず、最悪の場合、モータの停止も起こり得ます。バランシング精度、アライメント精度は、しっかり管理されるべきポイントです。

運転パターンの最適化

モータの用途によっては、負荷変動があったり、使用しない時間帯があったりする場合があると思います。この場合、運転パターンの最適化により効率化を図ることも可能です。わかりやすい例として、エスカレータがあります。最近のエスカレータには人感センサーがついていることは、皆さんご存じでしょう。使わないときに停止させることで、圧倒的な電力削減が実現できていると思います。これはまさに運転パターンの最適化といえますね。  

モータの再巻線

古いモータで、内部部品交換が可能なものに限られますが、巻線をやり直すことで効率を上げることも可能です。長期間使用したモータの巻線は、熱、振動、湿気などの影響で劣化が進行しています。そのため、本来の巻線能力が低下し、効率が悪化している場合もあります。巻線をやり直すことで、上記が改善されるのはもちろん、新技術や高品質な材料を使うことができれば、効率改善が見込めます。

限界がある場合は買い替えを検討

外部要因の改善には限界があり、本来持っているモータの性能に引き出すところまでです。さらに改善が必要な場合は、新しい性能のモータへの置き換えが近道となります。またその際、古いACモータを使用している場合は、DCモータへの置き換えもぜひ視野に入れていただきたいです。技術の進歩により、モータの種類は本当に増えました。現在は、ACモータの置き換えとしてDCモータが採用されることも多く、ユニテックでもDCモータへの置き換え相談を受け付けております。

ユニテックは省エネ性能の高い高効率なモータを開発・製造いたします

モータの果たす社会的な役割はとても重要です。エネルギー資源の節約とCO2排出量の削減に貢献するため、我々も日々技術向上に取り組んでおります。高効率モータをお探しの際は、ぜひユニテックにご相談ください。