ACモータとDCモータの違い

ACモータとDCモータの違いについて、その名前が示す通り、違いは下記となります。

  • ACモータは電源電流として「交流」を用いるもの
    (交流:Alternating Currentの略)
  • DCモータは電源電流として「直流」を用いるもの
    (直流:Direct Currentの略)

理科の授業でみなさんも習ったかと思いますが、電流には交流と直流の2種類があります。それぞれ利点・欠点があるため、どちらかに統一ということは難しく、これがACモータとDCモータの両方が存在する理由の一つでもあります。

電源の種類の違い

AC電源、DC電源の基本的な違いは、電気の「流れ方」にあります。AC電源は電流の向きが周期的に入れ替わる電源です。電線の中に流れる電流が、ある時は左から右に流れている、またある時は右から左に流れている。そのように行ったりきたりするのがAC電源となります。一方、DC電源は電流が常に一定の方向に流れており、逆方向になることはありません。こういった特徴の違う電源にあわせて設計したモータとして、ACモータ、DCモータが存在するのです。

前提として モータの回転する仕組み

モータの回転は、「磁石と磁石の間で発生する力」を利用して生成されています。永久磁石や電磁石(鉄心にコイルを巻いたもの。ステータとも呼ぶ)を円形に配置して、「磁石と磁石の間で発生する力」が回転方向に働くように設計することで、回転運動を生み出します。

回転運動を生み出すためには、「磁石と磁石の間で発生する力」をうまくコントロールする必要があるのですが、このとき、電磁石の働きがポイントとなります。電磁石の電流をコントロールすることで、電磁石に下記の機能を持たせることができます。

  • N極S極を発生させる(=コイルに正方向に電流を流す)
  • N極S極を入れ替える(=コイルに逆方向に電流を流す)
  • N極S極を消滅させる(=コイルの電流を止める)

これを理解したうえで、モータの回転運動がどのように発生するかをまとめると、

下記となります。

  1. コイルの電流の向きをコントロールする
  2. N極S極の配置をコントロールする
  3. 「磁石と磁石の間で発生する力」をコントロールする(回転磁界の形成)
  4. 回転運動が生まれる

長くなりましたが、お伝えしたかったのは上記1のコイルの電流の向きです。ACモータとDCモータとでは、1の電流のコントロール方法が違います。ACモータは、電源から流れるAC電流をコイルに流すことによって、N極S極の配置をコントロールします。

一方DCモータは、電源から流れるDC電流をコイルに流すだけでは、電流の流れは1方向だけなので、N極S極の配置を変えることはできません。電磁石のN極はいつまでもN極のまま、S極はS極のままです。そこで、N極、S極をコントロールするためにさまざまな工夫がなされています。

この視点で2つのモータの根本的な違いを把握しておくと、ACモータ・DCモータの理解がしやすくなると思います。

構造の違い

構造面の違いは、前項で示した「回転磁界の作り方」の違いから生じてきます。前述の通り、モータの回転には、回転磁界を発生させる必要がありますが、ACモータでは、電流の向きが変わるAC電源の特徴をそのまま利用して回転磁界を発生させます。

一方DCモータでは、DC電源そのままの電流では流れは一方向なので、磁界を変化させることができず、回転磁界の形成ができません。そのため、電流の向きをコントロールするために機構を追加したり、変換器や電子回路を付随させたりなどする必要があります。これにより、ACモータよりも構造は複雑になる傾向があります。

こういった理由のため、ACモータのほうが構造が単純であり、堅牢といえます。

制御方法の違い

AC電流よりもDC電流のほうが、電気信号を操作するのに都合がよい場面が多く、DCモータのほうがさまざまな制御機能を持たせやすいです。そのため、ACモータとDCモータとでは、制御のバリエーションにとても大きな差があります。

速度コントロール、ブレーキ機能、トルク制御、異常検知機能、回転角度量指定、など。ACではできない制御もDCではできたり、ACでできる機能も、DCのほうがより正確に、自由度の高く実現できます。

今この記事を読んでいる読者様は、PCもしくはスマホで読んでいらっしゃるかと思いますが、PCやスマホの中に流れているのは、DC電流であることはご存じでしょうか。

電力の元をたどれば、壁付のコンセントから供給されているとは思います。そのため大本はAC電源です。しかし必ず、「ACアダプタ」や「充電器」などと呼ばれるものを介して、PC、スマホに接続されているはずです。

そのアダプタや充電器は、AC電流をDC電流に変換する機能をもっており、PC、スマホにはDC電流が供給される形となっています。(デスクトップPCは、その変換機能を内部に有しているものもあるので、アダプタが不要な場合もあります)

他にも、テレビや、ゲーム機、オーディオ機器、レコーダーなど、複雑な機能を持つ電気機器はDC電流で動いています。このことからわかるように、多くの機能を持たせ、複雑な処理を行わせるためには、AC電流よりもDC電流のほうが都合がよいとイメージできるかと思います。

モータにおいても同様で、より複雑な機能をモータに持たせる場合には、ACモータよりもDCモータのほうが都合が良いのです。

効率とメンテナンス性の違い

一般的には、DCモータよりもACモータのほうが効率は高いと言われます。しかしこれは、モータの仕様や用途によって一概には言えないと考えるべきです。

ACモータはAC電流を変換することなくそのまま使うことができるため、エネルギー変換をしない分、効率が良いとされがちです。しかし反面、制御方法の項で述べた通り、回転を止めたり、逆転させたり、回転数を変化させたり、「動きを変化させる」ことが苦手なため、ACモータでこういったことを行う場合、効率が悪い場合も多々あります。

一方メンテナンス性においては、ACモータに軍配が上がると言っていいと思います。複雑な機能を持たせられないため、構造はシンプルにならざるを得ません。結果的に、壊れにくくなり、メンテナンスが必要な部品も少なくなります。

応答性の違い

前述の通り、ACモータ、DCモータは制御の視点で大きな差があるため、それがそのまま応答性にも適用されます。ACモータは本来持っている応答性を調整することがほぼできません。しかしDCモータは、多数の制御方法を適用することができますので、応答性の調整が幅広く実現できます。 

用途の違い

ACモータの用途

大出力で、単純な動き、比較的長い連続運転が求められる場面で、ACモーターの高効率と堅牢性の利点が発揮されます。

  • ベルトコンベア
  • ポンプ
  • コンプレッサー

DCモータの用途

制御性の観点で、多機能、他機器と連動して使用、など複雑な動きが必要とされる場面や、乾電池(乾電池もDC電源です)での起動ができるため、携帯性が必要とされる面で利用されます。

  • Cなどのファンモータ
  • 車載用モータ(パワーウインドウ、パワーステアリング、など
  • スマホのバイブレーション用モータ

ACモータとDCモータの種類

ACモータの種類

単相誘導モータ(単相インダクションモータ)

単相誘導モータは、名前の通り誘導させて回転させるモータです。

巻線もしくは、アルミ材料でかご型に形成されたものをロータとし、円弧状に並べたコイルをステータとする構造となっています。ステータにAC電流を流すことにより、回転磁界を発生させ、これによりロータ内に電磁誘導が発生、回転磁界に引っ張られるようにロータが回転する、といった原理です。

単純な構造で、かつ永久磁石を使用しないこともあり、コストが安く生産できます。また、大型化するほど高効率になるモータのため、大型モータが必要とされる産業用などに多く使われています。注意点としては、原理上、誘導電流が発生するため、これによるロータの発熱を考慮した設計、使用方法を考える必要があります。

三相誘導モータ(三相インダクションモータ)

基本構造は単相と同じですが、電源に三相交流を用いた誘導モータです。

多くの電力を使う工場などでは、安全性、効率面などから、電源に三相交流が使われているため、利便性を高めるために三相交流用に設計された誘導モータが開発され、使用されています。

永久磁石同期モータ

誘導モータのロータ部分に磁石を用いたものを同期モータと呼びます。回転の原理が若干変わり、回転磁界に永久磁石が引き付けられて回転するという、わかりやすい原理のモータです。永久磁石の強い磁力を活かせるので、誘導モータより大きなトルクを実現可能です。

リラクタンス同期モータ

誘導モータのロータ部分に強磁性の鉄芯を用いたものを同期モータと呼びます。こちらも回転原理が若干異なります。回転磁界に鉄心が引き付けられて回転する、という点は類似していますが、その回転は「磁気抵抗が最も小さくなる」という性質を利用して実現しています。

DCモータの種類

ブラシ付きDCモータ

ホビーなどに使われる、もっとも身近なモータの一つです。ステータは永久磁石、ロータはコイルで構成される物が多く、コイルに流れる電流の向きをブラシによって切り替えることで、回転を実現します。このブラシが、DC電流の向きを可変させる機能を担っています。

ブラシレスDCモータ

名前の通りブラシがないDCモータです。DCモータは電流の向きをコントロールするための仕組みが必要ですので、ブラシの代わりになる何かが使われていることが想像できるかと思います。それは何かというと、「電子回路」です。

ステータコイルに流す電流を、電子回路がコントロールすることで回転磁界を作り、モータが回転します。電子回路が必須となるため、複雑な機構となりますが、この電子回路にさまざまな機能を搭載できるため、多機能を実現できます。

サーボモータ

指示された動きを行うこと=サーボ制御を目的としたモータです。高い精度で位置決めができるシステムをあわせ持ったものです。サーボ(servo)は「サーバント(servant)=召し使い」が語源と言われています。

思うがままに動かすことができるモータを目指したものであり、例えば「10rpmで270度右回転したあと、5秒停止、その後20rpmで180度左回転する」といったような、細かな指示ができるモータです。

回転量を検知し、電流・電圧を瞬間的に可変させて指示を実現する、フィードバック制御(動きを観測し、観測値に基づき次の動きを調整する)を採用しており、組立ロボットや精密機械の駆動など、精度の高い位置決めが求められる用途で使われます。

ステッピングモータ

位置制御に特化したモータです。サーボモータに似た機能を有していると捉えることもできますが、構造、駆動原理、制御のアプローチの仕方が異なります。また、構造はリラクタンス同期モータに似ていますが、ロータに永久磁石が使われている点や、ドライブ回路による制御が必須である点などで大きく異なります。

通常のモータのように、電源を入れれば回り始める、というものではなく、「この速度で回れ」「この角度まで回れ」「この方向に回れ」といった司令を入れないと回りません。逆に言うと、指示した通りに回るといえます。これが、サーボモータのフィードバック制御と大きく異なる点です。

ACモータとDCモータのどちらを採用すればよいか迷ったら

どちらを使えばいいか迷った場合、DCモータを使うことをおすすめします。DCモータは、設計完了後もモータ周辺の制御システムを調整することで特性の微調整が可能です。ある目的で開発したモータを、別の用途で使いたい、といったときも、若干の部品変更や駆動プログラムの変更で、別用途に流用することができる場合が多くあります。

ユニテックは用途に合わせたカスタムDCモータを開発・製造します

電源や、設置場所の関係でACモータでないとうまくいかない、といった場合を除き、DCモータも視野に入れてシステム設計を行ってみていただきたいと思っております。 もちろん、その際はご相談いただければ、細かなヒアリングを行い、最適なご提案いたします。カスタムモータ開発・製造を得意とするユニテックへ、ぜひご相談ください。