電源電流として「直流」を用いるモータをDCモータといいます。
(直流:Direct Currentの略。ACモータとの違いはこちらをご覧ください。)

スマホ、エアコン、洗濯機や電子レンジなどに搭載されているモータ。幅広い用途で使われ、今や我々の生活に欠かせないものとなっています。身近なモータのほとんどは、その制御しやすさの観点から、DCモータが使われています。生活に浸透したDCモータの基本を理解することは、技術者としては必須ともいえます。

今回は改めて、DCモータの基本を紹介します。原理的に基本的で単純な構造を持つ、ブラシ付きモータを理解しておけば、他のモータの理解もスムーズですので、今回はブラシ付きモータを中心にお話しします。

DCモータの基本構造と仕組み

ブラシ付きDCモータの構造を、簡略化した図を以下に示します。

ロータ(回転子)

モータをモータたらしめる部分です。このロータに軸を接続して、回転運動に使用されます。ブラシ付きモータに於いては、コイル+鉄心で構成されており、コイルに電流を流すことで電磁石の機能を有し、ステータが形成する磁場との相互作用(フレミングの左手の法則)により、回転運動が発生します。

ステータ(固定子)

回転運動を行うロータに対して、動かない部分のため「固定子」と呼ばれます。モータの外周部に設置され、ブラシ付きモータにおいては永久磁石が使われます。モータ内部に磁場を形成する役割を持っています。

整流子(コミュテータ)

「電流方向を切り替える=流れを整える」という機能から、「整流子」と呼ばれます。ブラシとセットで使うことで、その役割を発揮します。直流電流をロータに供給し、電流の流れる方向を定期的に切り替える役割を果たします。

この整流機能がなければ、モータは回り続けることができず、軸は固定されるのみとなってしまいます。整流機能の実現は、まさにモータが生まれたことに等しく、大きな発見だったと思います。モータの構造・仕組みの理解には、整流子の理解は重要といえます。

なお整流子は、ロータの一部に設置され、回転しながら機能します。

ブラシ

整流子とセットで機能を果たすものです。電源と接続されており、整流子との接点を維持することで、ロータに電流を供給する機能を持っています。回転する整流子と接触しているため、ロータ回転中は常に摩擦が生じるため、消耗品として定期的に交換が必要な部品でもあります。

※上記の説明図は、原理を理解するために、各要素をシンプルに表記しております。実際のモータは、ロータは3~6スロット(コイルを巻く箇所が3~6箇所)、ステータが2~6極(NS極が1~3対)となっていることが多いです。(下図参照)

DCモータの動作原理

では、実際にどのようにして回転運動が実現されているのか、順を追って見ていきましょう。再度、こちらの図を使って考えてみます。

電流の供給

ブラシから供給される電源電流は、整流子を経由しコイルに流れます。

磁場との相互作用

モータ内部には、ステータにより固定された磁界が存在しています。その向きは、N極からS極への方向となります。(図において右から左へ向かう方向)この磁界を横切るようにコイルに電流が流れたとき、コイルには、「フレミングの左手の法則」によって導き出される方向にローレンツ力を受けます。

回転運動の生成

ローレンツ力により、N極側のコイルが上方向に、S極側のコイルが下方向に力を受けます。その結果、ロータは点線を軸として、反時計回りに回転します。このようにしてモータの回転運動は生成されます。

ここからわかるように、モータの回転力は、直線的な力の組み合わせによって作られていることがわかります。過去の偉人たちの応用力の賜物、素晴らしい発明だと感じずにはいられません。

電流の向きの切り替え(コミュテーション)

回転が進み、コイルが90度回転したとき、ブラシとコミュテータの接点がなくなることが図からわかると思います。この瞬間コイルが電源から切り離され、電流は流れなくなり、コイルは力を受けなくなるため、回転が止まる……とはならず、惰性で回転をし続けます。そしてその結果、整流子のA面、B面とブラシとの接触面が入れ替わり、コイルに流れる電流の向きが逆転します。その結果、N極側のコイルが上方向に、S極側のコイルが下方向に力を受ける形が継続し、回転が持続することになります。

このことから、電流の向きの切り替わりが、回転を持続させるために大変重要であることがわかると思います。

モータの回転運動が生成される仕組みが理解できたと思います。ロータ、ステータ、整流子、ブラシを使ったモータの回転原理を理解しておくことは、モータの基本中の基本です。ブラシレスモータやステッピングモータの回転原理も、ブラシ付きモータの応用と考えることが可能ですので、基本を押さえておけば、難しいことはありません。

DCモータの種類

さて、ここまではブラシ付きDCモータを使って説明してきましたが、もちろん、DCモータにはブラシ付き以外にもたくさんの種類があります。いくつか紹介します。

ブラシ付きDCモータ

改めて、ブラシ付きDCモータにも触れておきましょう。ブラシ付きDCモータは、玩具などに使われる、もっとも身近なモータの一つです。上記で説明した通り、ステータには永久磁石、ロータはコイルで構成される物が多く、コイルに流れる電流の向きを整流子・ブラシによって切り替えることで、回転を実現します。他のDCモータは、ブラシ付きDCモータの構造を応用したものと考えるとわかりやすいです。ステータ、ロータ、整流子、ブラシの役割を別のものに置き換えることで、新たな機能を付与させています。

ブラシレスDCモータ(BLDCモータ)         

名前の通りブラシがないDCモータです。同時に、セットとなる整流子も存在しません。さて、ここまでの話を理解いただけている皆さんであれば、「どうやって電流の向きを変えるのか?」がこのモータのポイントであることが想像できると思います。DCモータは電流の向きをコントロールするための仕組みが必要ですので、ブラシの代わりになる何かが必要です。

そこで登場するのが「電子回路」です。電子回路によって、電流の向きをコントロールすることで、回転運動を生み出します。

さらに、ブラシ付きDCモータとは構造が大きく変わります。ロータとステータの構成物が逆転し、ロータに永久磁石、ステータにコイルが使われるのが一般的です。ステータコイルに流す電流を、電子回路がコントロールすることで回転磁界を生成、これによりロータの永久磁石へ回転方向の力を発生させ、モータが回転します。

電子回路が必須となるため、複雑な機構となりますが、この電子回路にさまざまな機能を搭載できるため、多機能を実現できます。

ステッピングモータ  

大きなくくりで見ると、ブラシがないモータですので、ブラシレスDCモータと呼べるかもしれませんが、その構造・特徴が大きく異なるため、ブラシレスモータとは別枠で扱われます。

ロータに永久磁石、ステータにコイルが使われる点はブラシレスDCモータの一般的な構造に似ているのですが、永久磁石・ステータの形状に特徴があります。わかりやすい点を挙げると、永久磁石の極数を非常に多く設置しており、(擬似的にではありますが)100極(NSが50対)設置している物もあります。

これにより、細かな位置制御を行うことを得意としています。

通常のモータのように、電源を入れれば回り始める、というものではなく、「この速度で回れ」「この角度まで回れ」「この方向に回れ」といった司令を入れないと回りません。逆に言うと、指示したとおりに回るモータといえます。

電源以外の信号が必要であるため、ブラシレスモータ同様、制御回路が必須となります。

サーボモータ         

指示された動きを行うこと=サーボ制御を目的としたモータです。

位置制御も得意とするモータのため、ステッピングモータに似た機能を有していると捉えることもできますが、構造、駆動原理、制御のアプローチの仕方が異なります。

サーボモータは、「ブラシ付きDCモータ」or「ブラシレスDCモータ」に、外部部品を追加して、高い精度で位置決めができるシステムを付与したものです。

(モータの構造から名称が決まるものではないため、先に挙げた3つのモータとはやや立ち位置が異なりますが、よく比較されるものですので挙げさせていただきました)

「10rpmで270度右回転したあと、5秒停止、その後20rpmで180度左回転する」

といったような、細かな指示ができるモータです。

回転量を検知し、電流・電圧を瞬間的に可変させて指示を実現する、フィードバック制御(動きを観測し、観測値に基づき次の動きを調整する)を採用しており、組立ロボットや精密機械の駆動など、精度の高い位置決めが求められる用途で使われます。

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