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エンコーダ付きモータとは
モータをシステムに組み込んで使う際、回転速度の変更が必要な場面が多々あります。身近にある家電で考えてみると、下記のような例が挙げられます。
エアコン…風量調整
プリンタ…紙の送り出し速度の調整
パソコン…内部冷却ファンの速度調整
いずれもモータの回転を変動させることができないと、満足に機能を果たすことができません。エアコンは効きが悪くなり、プリンタは正しく印刷ができなくなり、パソコンに至っては冷却不足で熱暴走、故障につながりかねません。
この回転速度を正確に変動させるには、回転方向や回転速度を測定することが重要になります。その測定機の役割をもつのが、エンコーダと呼ばれる装置です。エンコーダ機能が備わっているモータをエンコーダ付きモータと呼んでいます。エンコーダによって、高精度な位置決めや速度制御が実現可能となります。
エンコーダの主な役割
位置の検出
モータの軸が現在どの角度にあるのか、回転開始から、いくつの角度回転したのか。停止時、どの位置で停止したのか。こういったことを正確に把握することで、精密な作業、誤差のない動作を実現できます。
例えば、3Dプリンタや組立ロボットのアームなどは、1mmよりも細かな、精密な動きが求められます。精密な動きを実現するためには、現在位置の把握は必須です。もしあなたが、地図を広げてこれから向かう目的地を決めたとしても、自分たちが今どこにいるのかを知るすべがなかった場合、東西南北どちらへ向かえばいいか決められませんよね。これと同じで、精密な仕事を行うためには現在の位置を正確に検出することが大変重要です。この点において、エンコーダの機能が活躍します。
速度の検出
回転の速さをリアルタイムで測定できます。モータは、スイッチを入れれば同じ速さで回転を続けると思われがちですが、実際はそうはいきません。あらゆる外乱要素があり、回転数は揺らぐことが多いです。
電源が不安定になれば、電圧・電流が変動して回転数に影響しますし、負荷が変動すれば回転数に大きな影響を与えます。
(負荷の例:ベルトコンベヤに載せる荷物の量が変わる、エレベータに乗る人数の変動、電子レンジに載せる食材の重さの変動などなど)
用途によっては、こういった回転数変動が望ましくない場合があります。(エレベータに乗り込む人数によって昇降速度が変わってしまってはおかしいですよね)その場合、回転数が一定に保たれるような司令を出す必要がありますが、そのためにはリアルタイムの回転数を把握することは必須です。この検知機能としてエンコーダは重宝されます。
方向の検出
モータがどちら方向に回っているか(CW:時計回りor CCW:反時計回り)を検知できます。モータの回転方向は、司令信号によって決まるので、検知する必要はないように思えます。(CWに回れ!という指示を出せば、CCWに回ることは通常ありえないため)ではなぜ検出が必要かというと、一つは異常の検出、もう一つは正確に状況把握を把握し、次の運転につなげるためです。
(参考:CW…Clock Wise、CCW…Counter Clock Wise)
異常検知は言葉通りで、異物混入などの何らかの影響で逆回転してしまったことを検知するために利用されます。もう一つの機能は、複雑な運転を行うために使われます。
用途はアイデア次第ではありますが、例えば、複数のモータ間で同期動作が求められる場合、位置情報はもちろん、回転方向の同期が必要になることがあります。司令を出してから、実際に回転方向が変わるまでのタイミングは個々のモータで誤差がある場合もあるので、その状況を検知することでシステム全体の同期を取ることが可能となります。
フィードバック制御
これまで紹介した機能を使って取得したデータをもとに、モータの動作を細かく調整することで、目標とする回転数、移動量、停止位置などに正確に合わせ込むことができます。検知して得られた結果をもとに、次の動きを調整する一連の動作をフィードバック制御と呼んでいます。
エンコーダの種類
光学式
LEDが発した光を受光センサが検知する、というシンプルな構造を利用したものです。
モータの回転軸に、無数のスリット穴が設けられた円盤がとりつけられ、この円盤を挟むようにLEDと受光センサが設置されます。円盤が回転すると、LEDの光が受光センサに透過・遮断が繰り返される形となり、受光センサの検知信号によって回転速度が計算される、という仕組みです。光の透過・遮断で検知を行うもので、周囲の電磁波や電気ノイズ、磁界などの影響を受けないため、精度の高い検出が可能です。
磁気式
ロータに取り付けられた永久磁石による磁界を、磁気センサが読み取ることによって回転を検知する方式です。ロータが回転すると永久磁石によって形成される磁界分布が変化します。その磁界の変化をセンサが検知し、電気信号に変換、出力することで、回転情報を取り出すことができます。
エンコーダと類似の機能を持つセンサ
エンコーダは、0か1か、ONかOFFか、というパルス信号を発生するものであり、デジタル信号を出力します。そのためマイコン等を使ったシステムと相性が良いです。一方、アナログ回路上で回転数情報を扱う場合、エンコーダは不向きです。アナログ回路上で回転情報を検知するにはどんなものが使われるかも、ここで紹介しておきます。
ポテンショメーター
いわゆる可変抵抗器です。突き出たシャフト部を回すことで、端子間抵抗値が変動する抵抗器ですが、このシャフトをモータの回転軸に接続して使われます。回転軸の位置が抵抗値にそのまま現れますので、角度の現在地を知ることができます。回転角に制約があるタイプのサーボモータに搭載され、エンコーダ機能として使われます。
タコジェネレータ
発電機としてのモータと同じ原理を持つものです。モータは、電気エネルギーを与えることで回転運動を生み出しますが、逆に外部からの力を使って回転運動与えると電気エネルギーを発生させる発電機機能を有しています。この発電機機能を利用したものがタコジェネレータです。
タコジェネレータの回転軸に外部から回転を与えると、速度に比例した直流電圧を発生します。この電圧の大きさによって、回転数の検知が可能です。
エンコーダ信号の出力方式
先の項目で「位置の検出」機能を説明しましたが、位置検出の中でも、絶対位置と相対位置という考え方があります。位置というのは、モータ軸の回転方向の位置のことですが、それぞれ下記を意味します。
絶対位置:原点から何度回転した位置にあるか
相対位置:電源が入ってから何度回転した位置にあるか
システムの目的によって、どちらが必要であるかは異なってくるため、用途に合わせたエンコーダの選定が必要です。
アブソリュート方式
絶対位置検出が可能な構造を持つものです。モータ軸が1回転内のどこの位置にいるかを検出可能です。回転位置によって出力される信号があらかじめ決まっており、それによって絶対位置を検出することが可能です。
インクリメンタル方式
絶対位置検出はできず、相対位置検出のみ対応した方式です。絶対位置がどこにあろうと関係なく、一定のパルス波形を出力します。
エンコーダ付きモーターの活用例
製造工程での活用例
産業用ロボット
搬送、組み立て工程などで使われる、人間の腕のような動きをするロボットをご存じかと思います。滑らかにものをつかみ、特定の場所へ運んだり、部品を組み合わせてネジを締めたりするなどの工程を行うロボットが実用化されていますが、この動きを成立させるためには正確なモータの位置検出が重要です。ここにエンコーダの技術が使われています。
工作機械
マシニングセンタなどの加工機における、スピンドルやテーブルの送り速度の制御は、加工精度・加工スピードを高めるために大変重要です。こういった場面にもエンコーダが使われます。
半導体製造装置
半導体は細かな部品から構成されており、製造には超高精度が求められることはみなさんもご存じかと思います。こういったナノ単位の位置制御が求められる世界でも、エンコーダが使われています。
最終製品での活用例
エレベータ
エンコーダは、エレベータの安全・快適性にも貢献しています。静かな始動、正しい位置での停止、ドアの素早い開閉、スムーズな減速、様々な箇所でエンコーダが活用されています。
医療機器(MRI、CTスキャン装置)
高い安全性、正確な測定が求められる医療機器においては、正確な位置決めが重要となります。エンコーダによって、患者台や回転機構の位置制御が行われ、的確な医療提供が実現されています。
自動車
自動車には数多くの回転機構が備わっており、あらゆる箇所でエンコーダが使われています。スロットル(アクセルの踏み込みを車のスピードに反映させる機構)、電動パワーステアリング、EVモータなどに使われ、自動車が安全に走るためには必須な要素となっています。
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