PWMとは、Pulse Width Modulationの略です。日本語に訳すと、「パルス幅変調」という言葉になります。日本語に訳しても結局専門用語なので、わからない方も多いと思いますので、簡単な例をあげて考えてみましょう。非常時に使う懐中電灯をイメージしてください。電源スイッチをONすれば明かりが点き、OFFすれば明かりが消えますね。ではこのスイッチを繰り返しON・OFFするとどうなるでしょうか。答えは簡単です。点滅を繰り返すことになりますね。人間がボタンの操作を行った場合は点滅するだけになります。
しかし、この操作を電子回路にお願いして、ON・OFFスピードをものすごく高速化したらどうなるでしょうか。答えは、「暗めに点灯」です。点滅はせず、普通のON状態よりも若干暗く点灯する、という挙動になります。
実はこのON・OFF操作が、まさにPWM制御で行っていることそのものです。PWM制御をざっくり理解するなら、つまり「電源スイッチの高速ON・OFF」ということになります。今回はこのPWMをもう少し深掘りしていきます。全て読んでくだされば、なぜ点滅ではなく点灯状態になるのか、理由を理解できますし、モータにとってPWM制御がとても重要である理由がわかると思います。
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PWM制御の仕組み
PWM信号
PWM信号とは、まさに先に挙げたON・OFFで構成される矩形波のことです。PWM制御では、ONしている時間とOFFしている時間の比率を容易に変えることが可能です。この比率のことをDuty比と呼びます。具体的には、下記のような状態を自由に行き来できます。
Duty比 100% → ON・OFFせず、ずっとON状態
Duty比 80% → ONの時間が80%、OFFの時間が20%
Duty比 50% → ONの時間が50%、OFFの時間が50%
Duty比 0% → ON・OFFせず、ずっとOFF状態
とてもわかりやすい結果ですね。ON時間の比率で電圧が平均化された値に変化します。実際の電子回路では、平滑化処理のためにコンデンサなどが必要ではありますが、PWM制御の概念は上記のようになります。Duty比を変化させることで、平均電圧を任意にコントロールすることが可能です。
最初に例として挙げた懐中電灯の話は、ここまでの話で理解できると思います。ON・OFF動作により、例えばDUTY比が50%になった場合、電球に供給される電圧が半分に下がりますので、「暗めに点灯」となりますね。
モータ制御
では、PWM制御をモータ制御に取り込んだ場合、どのようなことが実現可能か考えてみましょう。モータに入力する電圧が変化すると、流れる電流が変化し、回転数・トルクが変化します。PWM制御を取り込むことで、電圧を任意に変化させられるとなれば、回転数・トルクを任意に制御できることとなります。
モータを一定の回転数・トルクで使い続ける用途も多くあり、この機能ももちろん極めて重要ですが、状況に合わせて回転数を変えるなど、負荷の変動に合わせたトルクの調整は、さらに頻繁に求められる挙動です。PWM制御は、モータにとっては切っても切れない重要な制御技術であり、モータが使われる分野では当たり前となっている技術です。
モータ開発者は言わずもがなですが、モータを使ったシステムを構築する方にとっても、PWM制御を理解しておくことは業務をスムーズに進めるにはとても重要だといえます。
PWM制御のメリット
速度制御の容易さ
モータの速度を変化させる方法は、ギヤボックスを使う方法、可変抵抗を使って印加電圧を変化させる方法、電源電圧を直接変更する方法など、いくつか方法はありますが、PWM制御ほど容易に速度が変えられる手段は他にありません。連続的に、かつ幅広い範囲でモータの速度を制御可能な大変優秀な方法です。また、PWM制御は回路構成が比較的単純であり、導入しやすいことも相まって、モータ業界では広く一般的に使われています。
低発熱
PWM制御は、「OFF時間をつくる」という動作で電圧降下を実現しています。OFF状態のときは、当たり前ですが電流が流れないため、電力損失が発生せず、余分なエネルギーを熱として消費することがありません。
一方、可変抵抗器などで回転数調整を行う場合は、分圧によって抵抗体に印加された電圧が熱として消費され、無駄な電力損失が発生してしまいます。PWM制御は、いたずらに電力を消費することは行わないので、発熱面では大変優位になります。
省エネ
回転数・トルク調整が柔軟に可能、ということは、必要なときに必要な出力を出すことができる、ということにつながります。わかりやすい例としてPCの冷却ファンを考えてみましょう。PC内には発熱体が複数あり、その温度が上がりすぎないようにファンで冷やしています。PCで作業をしていて、「あるとき急にファンの音がうるさくなった」という経験をされた方は、読者の中にもいらっしゃるのではないでしょうか。これは何が起きているかというと、
PC操作中、高い処理能力が必要な作業を行う
↓
CPUの処理速度が上がり温度上昇
↓
温度が高くなったことを温度センサーが検知
↓
冷やすためにファンの回転数が上がる
ということが起きています。つまり、通常時はファンの回転数は低めに回っており、必要なときに、必要な分だけファンの回転数(モータの回転数)を上げる、という制御です。常に冷却ファンが全速力で回っていては、エネルギーの無駄になってしまうため、必要に応じて回転数を調整しています。この動作を実現するために、PWM制御が使われています。不要な電力を細かくカットできるので、無駄がありません。
PWM制御の主な用途
ブラシ付きDCモータ
ブラシ付きDCモータは、ブラシレスモータの需要が増えるにつれ近年は使用量が減っている傾向があります。以前は多くの分野でブラシ付きDCモータ+PWM制御が使われていましたが、ブラシレスDCモータに置き換わりつつあります。
しかしながら、ブラシ付きDCモータの大きな特徴として、「初期コストが安い」という点があり、この点を活かせる分野には根強く使われています。具体的には、小型ドローン、ラジコン、車載用のパワーウインドウなどです。
ブラシレスDCモータ
PWM制御は、ブラシレスDCモータと大変相性が良いです。と言いますのは、このモータは電圧印加だけでは回らず、必ず電子回路(モータドライバ)が必要となるため、その電子回路上にPWM制御機能をあらかじめ組み込むことが可能です。
販売されているモータドライバには、PWM制御機能が付与した状態がデフォルトとなっていることも多いことから、親和性が高いことがわかります。先に例として紹介した通り、PC用のファンモータも、ブラシレスDCモータ+PWM制御が搭載されることが多いです。
また、近年は家電量販店で販売されている扇風機にも「風量無段階調整可能!DCブラシレスモータ搭載!」という名目でアピールしている商品が増えています。これは、PWM制御によって細かな回転数調整が可能であることの提示にほかならないのです。他にも、荷物搬送やテレビの空撮などに使われる大型ドローンに使われており、いかに私たちの生活に溶け込んでいることがわかるかと思います。
サーボモータ
精密な位置制御が求められるシステムにはサーボモータが使われますが、その精密な動きを実現するためにPWM技術は必須です。公差精度±0.1は当たり前、±0.01以上の精度が求められることもあるCNC工作機械にはサーボモータが使われており、PWM技術がその高精度技術の根底を支えています。
他には、ロボットの分野でもサーボモータ+PWM制御が活躍しています。工業用のロボット、人型ロボット、いずれのロボットも、位置制御が大変重要であり、精密な動きが求められます。
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