モータのポール数(極数)とは

モータの構成要素として欠かせないものの一つに磁石があります。

みなさんもご存じの通り、磁石は必ずN極とS極がセットになっています。極数というのは、このN極・S極の数を示します。よく間違えるのがその数え方なのですが、「N極S極1セットで極数は1」、という数え方は間違いです。N極の数、S極の数の合計をカウントしますので、「N極S極1セットで極数は2」と数えます。すなわち最小は2であり、その数は必ず偶数になります。
(表記例:極数2、ポール数2、2Pなど)

モータの回転数とは

モータの特性を語る上で回転数は必須の項目です。回転数とは、回転するスピードを表したもので、モータをどのように使うかによって、適切な回転数は変わってきます。

回転数の単位

回転数の表し方は複数ありますが、大きく分けて2通りの単位で表記されます。

  • rpm(=r/min)

Rotations Per Minuteの略。1分間あたり何回転するかを示します。
※Revolutions Per Minuteと解釈されることもあります

  • rps(=r/s)

Rotations Per Secondの略。1秒あたりに何回転するかを示します。

回転数に応じて用途が変わる

回転数は速ければ速いほど良い、というものではありません。

例としてエスカレーターを考えてみましょう。遅すぎては階段を使ったほうが速い、ということになりますし、速すぎては事故につながってしまいます。用途に合わせた速度のモータを選定することが大切です。

用途例① 低速モータ

低速モータは、高トルクが必要な場面や、高精度な位置制御が求められるときなどに使われます。(ギアボックスがセットで使用されることも多いです)

具体例としては、電動リフト、洗濯機、プリンター、工場の組立支援ロボットなどがあります。

用途例② 中速モータ

中速モータは、トルクと速度のバランスが求められるときに使われます。

具体例としては、水中ポンプ、電気自動車のEVモータ、携帯電話のバイブレーション用モータなどがあります。

用途例③ 高速モータ

高速モータは、狭い空間で高出力が必要となる際に使われます。トルクは小さくなりがちですが、それを回転数で補うような使い方がされます。具体例としては、掃除機、サーバー冷却ファン、ホビー用モータなどがあります。

モータの極数と回転数の関係

極数と回転数は、互いにトレードオフの関係にあります。極数を増やすほど回転数は下がり、極数を減らすほど回転数は上がる関係となっています。

極数と回転数がトレードオフになる理由

ここでモータが回る仕組みをおさらいしてみます。モータに電流を流すと、コイルが巻かれたコアが磁化します。磁化され、電磁石となったコアと磁石が引き付け合い(あるいは反発し合い)ロータが「少し」回転します。

コイルの電流の向きは一定時間ごとに切り替わりますので、そのたびにコアのN極S極は切り替わり、コアと磁石はその都度引き付け合い(あるいは反発し合い)、ロータは「少しずつ」回転します。これが連続的に行われることで、回転運動が生み出されます。

さて、上記で「少し」と書いた回転方向の移動量。これは、極数によって変動します。

この「少し」の移動量は、隣り合う磁石間の距離と一致します(厳密にはその構造や制御方法で異なりますが、ここでは簡略化して考えます)。例えば、極数2の場合。一度の電流の切り替わりで1/2回転となります。これが極数8となった場合、その回転量は1/8回転。極数に対して回転量が変わるため、電流の切り替わり速度を一定の条件として考えた場合、回転数が変わるということになります。

  • 極数2(低)→ 回転量1/2 → 電流の切り替わり2回で1回転 → 回転数:高
  • 極数4(中)→ 回転量1/4 → 電流の切り替わり4回で1回転 → 回転数:中
  • 極数8(高)→ 回転量1/8 → 電流の切り替わり8回で1回転 → 回転数:低

極数と回転数は、互いにトレードオフの関係にあることがわかると思います。

では、極数と回転数をどのように最適化していけばよいのかを考えてみましょう。基本的にモータの設計は、目標の特性を設定することから始めます。

目標として設定する項目は、その時々で変わりますが、回転数はほぼ必須項目です。極数がその項目に入ることはまれです。どちらかといえば、極数は目標とする特性を実現するための調整要素、という位置づけになります。すなわち、目標特性を実現するために極数は調整される、ということになります。

ただし、極数の値によって影響を受けるのは回転数だけではありません。さまざまな影響を加味して、極数を決めていく必要があります。では、極数はどのような要素に影響を与えるのでしょうか。

モータ開発・製造におけるポイント

例えば、同一特性のモータを極数2と極数4で実現しようとした場合、どのような項目を調整する必要があるのかを考えると、下記となります。
(ブラシ付きかつ磁束が同一という条件下の場合)

  • モータ外径
  • 巻線仕様

上記の要素を合わせ込めば、極数が違っても同じ特性を実現することはできます。

極数がいくつであろうと必要特性が出せるなら、「極数はあまり重要ではないんだな」と思われたかもしれません。しかし実際のところ、極数の影響は下記に示すように多岐にわたります。

  • トルクリップル
  • 振動
  • 電磁音
  • 部品コスト
  • 組立コスト
  • 整流性(ブラシ付きモータの場合)
  • スパイク電流 など

これらの影響が問題になるかどうかは、お客様、または自社内の事情によるところが大きいですが、全てを完全に無視できる状況は少ないと思います。例えば、トルクリップルは比較的重要な要素です。

極数、スロット数が大きくなるほど大きなトルクが得られトルクリップルも小さくなります。トルクリップルは小さいほうが悪い状況は発生しにくく、有利であるといえます。

しかし、反面、コストアップにもつながるため、極数をやみくもに大きく設計すればいいというわけではありません。バランスが重要となってきます。

トルクリップルは脈動とも言われますが、モータの振動や電流波形、スパイク電流などに影響します。これらの要素はモータを駆動させる環境との相性確認が必要な場合があり、モータが取り付けられる装置、モータを駆動する電源など、お客様側のシステム全体とのマッチングを考えることも時には必要です。

極数の決定は、やはり単純に行えるものではなく、検討・実験が必要であることがおわかりいただけたかと思います。 モータをどのように使用するのか、お客様からしっかりヒアリングすること。そして、社内の組立現場との連携力なども忘れてはならない重要なポイントです。

ユニテックはお客様の用途に合わせた最適なポール数(極数)と回転数のモータをご提案します

型式により製造可能な極数は決まっております(DCブラシ付き)。DCブラシレスも同様に型式により8極/12極は決まっており、用途というより仕様に合わせて型式を決定しております。

いずれにしても、お客様に合わせ最適な製品をご提案いたしますので、安心してお問い合わせください。